バレンタインデーは明日だが今日心温まる小文を読んだ。
その昔結婚記念日を前に愛し合っている貧しい夫婦がいたそうだ。
まだ腕時計が普及する前で夫は懐中時計を持っていたが、
鎖が買えなくて背広のボタンに紐で留めて内ポケットに入れていた。
妻はびっくりするような贈物をしようと考えあぐねたすえ、
自分の長い豊かな髪を売って金の鎖を買った。
さて結婚記念日の当日、
短くなった髪をスカーフにくるんで鎖の入った小箱を出すと、
夫も同じような小さな箱をさし出した。
開けてみると長い髪にしか飾りようのない髪飾りだった。
夫は愛する妻のために自分の時計を売って買ってきたのだった。
これはO・ヘンリーの短編を引用した池澤夏樹氏のエッセイである。
伝えにくい気持ちを伝えるのが贈物だとしたら、
義理チョコでもいいではないかは池澤氏の受け売りである。