牧逸生君、先月の同期会ではわざわざ神戸から参加してスピーチをしてくれた。
アイガー北壁や冬の鹿島槍登頂、ヒマラヤ遠征の話しでは、
われわれの同期生にもこんなスーパーマンがいたのかと、
だれもが驚きをかくさず聞き入っていた。
それが事故を伝える新聞記事は、無職の男性が比良山で沢登り中、
滝つぼに転落、ほとんど即死、とあっさり書いてある。
私にはひと月前に会った牧君の精悍な姿が目の前にうかんで、
弔電を打つにも声がつまってなかなか電文を読めなかった。
死とは前ぶれもなく彼方から突然やってくるのだろうが、
その反面私には無縁のものと強く思っていなければ生きていけない。
来週妹夫婦と槍ヶ岳を登る予定であるが、
天候も梅雨明けにぎりぎり間にあいそうだし、存分に楽しんでくるつもりだ。